相続贈与遺言の中原会計
 

相続税の物納

物納制度

相続で取得した財産のうち、土地や建物など換金が難しいものが大部分で、一時に金銭で納付することはもちろん、延納の方法を用いてもなお納付できない相続税額が残ってしまう、ということがあります。このような時、税務署長の許可を得て、有価証券や不動産の現物をもって相続税を納付する制度が物納制度です。(相法41の1)

 

相続税の物納

物納できる財産と物納順位

物納できる財産は、日本国内にある右のような財産で、その時の相続で取得したものに限られます。数字は物納順位です。つまり、原則として第2 順位の財産は、取得した財産に第1 順位のものがないときに初めて認められることになっています。
 1. 国債および地方債

 2. 不動産および船舶

 3. 社債および株式
    ならびに投資信託

 4. 動産

 

相続税の物納

物納できない不動産

次に掲げるようなものは、国有財産として管理または処分をするには面倒な財産とみなされ、物納申請の変更を求められますので注意が必要です。(相法42の2但し書、相基通42-2 )

(1)共通事項

1. 質権、抵当権その他の担保権の目的となっている財産

2. 所有権の帰属等について係争中の財産

3. 共有となっている財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合を除いて)

4. 譲渡に関して、法令に特別の定めのある財産(例えば農地については農地法の制度があり)

(2)物納できない財産

1. 買戻し特約や所有権移転の仮登記の付いたもの

2. 売却の見込みのないもの(例えば、無道路地・私道・崖地のみの単独土地・借地権を有しない建物など)

3. 土留、謹岸等の施設や修理を要する土地

4. 隣地との境界線が明確でない土地

5. 公共用地となっている土地または建物

6. 今後数年以内の使用に耐えないような建物

7. 入会慣習のある土地

8. 維持または管理に特殊技能を要する劇場、工場、浴場その他の大建築物

9. 借地、借家契約の円滑な継続が困難な不動産

相続税の物納

物納の収納価額

物納財産の国への収納価額は、原則として、物納しようとする財産の相続日時点での相続税評価額となります。

相続税の物納

物納手続

相続税を物納しようとする場合には、相続税の申告期限までに所定の事項を記載した物納申請書を税務署長に提出する必要があります。そして税務署と国税局の調査を受けて、物納の許可を得なければなりません。調査のポイントは、前述した「物納できる財産」の要件をすべて備えているかどうかということです。調査の結果、申請の期限から3ヶ月以内に税務署長は物納財産ごとに許可か却下の決定をしなければならないことと定められました。

 物納申請をしていた人が、その後、土地を売却するなどして現金を調達できた場合、物納の撤回を税務署に求めることもあり得ます。この場合、税務署は物納許可後1年以内に限って物納の撤回を認めており、金銭による即納または延納への変更ができることもあります。これが物納の撤回制度といわれるものです。(相法43-5) ただし、今日のような不動産の不況期には土地を売りに出しても、なかなか適当な買い手を見つけるのは難しいことを、頭の隅に留めておいてください。

相続税の物納

物納準備の注意事項

1. 対象は金銭や延納で納付できない相続人

「頭金は老後の万一の資金として残しておき、土地を物納して相続税を納めたいと考えています」と言い切る方に時々出会いますが、これは通らない理屈です。現金をはたき、そして将来の収入を延納に充当しても、なお納めることができない相続税の相当額が残る人にのみ物納が認められているのです。ですから、物納した人のその後の生活は大変窮屈なものになるでしょう。ただし、健康的で文化的な最低条件の生活は、憲法が保証しております。

 

2. 境界明示

物納する土地の隣地との境界は、官・民境界も民・民境界も明示杭を打って明確にしておかなければなりません。また、通常はこの境界線にはフェンスを施設することを税務署から求められます。実際の物納作業の中では、この境界明示が一番やっかいで、かつ費用がかかります。
例えば、隣地の人と20年も昔から紛争中の案件が横たわっていたとしたら、この土地の物納はまず困難でしょう。また、隣家の屋根や樹木、クーラーの室外機などが物納しようとする土地の上に侵入している現状があるとしたら、今のうちから撤去を求めるなど交渉に入っておく方がよいでしょう。いずれにせよ、隣地との境界の調整は、相手の心情にも配慮して、相続の日がやって来るまでに早めに確定しておくことが肝要です。相続が発生してからでは、昔のことを知らない息子さんたちが交渉を仕掛けてゆくことになるのですから、一代格落ちにならざるを得ません。お父さんの健在な時に境界を確定しておきたいものです。

 

3. 道路の確保

道路に接していない土地は物納できません。4m 以上の道路に接道していないと、建物が建築できないのです。「この土地なら手放してもご先祖様から叱られない」などと言い、無道路地を物納用地として選定している方も時々いらっしゃいますが、これは困ります。どうしてもその無道路地で物納をとお考えでしたら、なんとか隣地と交渉して、売買か交渉で接道する道路を生前に確保しておきましょう。

 

4. 担保の抹消

担保が付いている土地は物納できません。法務局で登記簿をあらかじめ確認しておきましょう。最近の事例で、昭和18年に付いた1,000円の担保が、今日までずっと残っていて大騒ぎになったことがありました。

 

5. 老朽貸家の立退き交渉

貸家も入居者付きで物納することが、一応は可能な財産ですが、古い貸家で低家賃のものは現実的には困難です。国の予定している適正家賃、適正地代まで増額することが難しいからです。今から長期戦でじっくりと立退き交渉に入り、相続の時には老朽建物を解体撤去して更地で物納する方が有利になるでしょう。相続の時点では入居者が満室で、1年後には更地にして物納できれば理想的でしょうね。

 

 

<物納劣後財産> -不動産の場合の一部例示-
次のような財産は、他に物納する適当な財産がない場合に限って物納に充てることが可能となる財産です。

1.地上権、永小作権、地後権等が設定されている土地
2.違法建築の建物及びその敷地
3.仮換地指定以前の土地区画整理事業施工に係る土地
4.道路に2m以上接していない土地

(以下省略)

 

 

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