相続贈与遺言の中原会計
 
生前贈与 不動産の分割贈与は慎重に
 

私の出会った生前贈与の失敗事例の一つを紹介しておきましょう。
500坪の一筆の宅地があり、そこには5棟の住宅が建てられ、両親の母屋の他に長男、次男、三男、四男の家族がそれぞれくらしていました。長女と次女は他家へ嫁いでいます。 子供が6人、孫が合計14人ありました。この20人に対して、お父さんは毎年500 坪の宅地を少しずつ8年がかりで贈与したのです。毎年1/160 ずつの持分贈与です。そのおかげで、3 年前に亡くなったお父さんの相続税は見事0 円でした。贈与も1人110万円以下ということで、8 年間一銭の贈与税も納付せずでしたから、万々才の相続税対策だったわけです。
しかしながら、父の死後の四十九日を迎える頃になって、相続人の子供さん達が一勢にその後の大変さに気づき始めました。それはこういうことです。


1. この家を住宅ローンを借りて建て替える時、19人の担保提供者の同意が必要となる。
2. 兄弟が次々に亡くなって100年くらい経つと、相続を繰り返した結果、この宅地の所有者は今の何倍になってしまうだろうか。
3. 他家へ嫁いだ長女、次女は換金処分したくても不可能であり、利用価値がまったく無い。
4. 次男の事業は目下、資金繰りが大変であり、万一倒産でもするとこの土地はどうなるのか。
5. 毎年増額されていく固定資産税は誰が責任をもって納付するのだろう。

等々、この土地のどの部分を取り挙げても1/20ずつの共有持分ですから、ガンジガラメです。
 相談を受けた私は、友人の司法書士、土地家屋調査士さんの協力を得て、まず、宅地の中央に私道部分を設定した上で、ファミリー単位の持分で共有物分割の登記手続を済ませ、税務面では売買、交換、贈与の契約書を 約 80 通も作成したり申告したりしました。お陰でやっと整理がつきましたが、この3 年間の相続人や関係者の労力や費用は大変でした。
 土地を生前贈与する際、親子の共有とする場合は将来の相続手続さえスムーズに進めば、いずれは単独所有に落ち着きますが、兄弟の共有はその点やっかいなので避けたいものです。兄弟間は分筆するとか、別個の土地を指定してから生前贈与を進めるのが常道だと思います。

 

生前贈与 預金の贈与手続きは慎重に

「私は毎年孫に110万円ずつ預金を贈与している。」というお話によく出会いますが、本当に贈与したことになっているのでしょうか?
贈与とは「あげましょう。」「ありがとう。いただきます。」という双方の合意があって成立する契約なのです。贈与した後は預金の通帳も銀行印も、贈与を受けた孫が所持管理をしていて、孫か孫の親権者が自由に引き出せる状態になっていなければなりません。
贈与した人の印鑑で贈与を受けた人の預金証書が作られているケースも贈与が成立しているとは認められないでしょう。贈与が成立していない場合は、結局のところ、子供や孫の名義を拝借して親なり祖父母が預金をしていたものともみなされて、相続財産として認定され、相続税を課税されてしまうのです。
10年前に東京へ嫁いだ娘に毎年贈与しているが、親の取引銀行である大阪の銀行で預金を積み立てているというケースもまず贈与とはみなされないでしょう。
やはり111万円以上のお金を贈与して贈与税の申告納税をしておくべきだと思います。贈与税の申告は、贈与を受けた人がその事実を税務署に対して宣言する行為なのですから。

 

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